blog拝啓、雲樹立つ寺より

雪はまだ解けない

投稿日: 2023.02.13


今年の雪の被害者くん、頑張って生きてもらうために生かします

 

雪がようやく溶けてきました。
解けると書くべきか、溶けると書くべきか

なんというか、解ける(ほどける)ような感覚も有るんです
雪、そしてそれらが降る環境は全く自由でありません
路が凍る、雪が固まる、車が動かない・・・人も動きづらい・・・
そのような状態から解放される、というのは解ける感覚と似ています

決して「ゆきがとける」と打ち込んだら「解ける」の方が出ちゃったから
まあいいか!となったわけでは無いです
現にホラ、この通り文章で説明してる!
単なる言い訳?んまぁ・・・そうね・・・

雲樹寺住職の醍醐としては、そういう気持ちなわけです
たとえば偶然だったとしてもです

 

 

でもタイトルで「解けてない」って言ってるじゃない

そうなんですよ
まだ解けていないんですね

単純に降って積もった雪は、もうありません
しかし、屋根に降ってずり落ちた雪「摺り雪」は容易に溶けません
位置エネルギーにより圧縮された密度の高い雪
さらに量も平場に比べはるかに多い
こいつらは、春まで残るでしょう
この通り、大概が無くなっても残るんです

雪が降る、雪が解ける
状態っていうのはそれだけでしょうか
言葉にすればそれだけの事の中に、見えぬものが在ります
これが、言葉が嘘だと言われてしまう所以ですね
形になっているがゆえに、見えるもの以外が全く見えなくなる

これを文章として詳細にすることにも利点が有ります
しかしそれは冗長だという欠点も有ります
このどちらにも埋められない部分があるっていうのも、言葉の力ですね
そして、この埋められない部分を想えるのも、言葉の力です

余白

無い部分、だからこそ在ると言える部分
形にならないからこそ、見るべきもの
ここを考えることができるのは、言葉を操る人間の心ならでは

雪はまだ、解けていません

 

 

九相図、っていうものがありまして

それだけ見ると、ちょっとカッコいい何かを思うかもしれませんが
これ、九種類の死体の画です

生きていた頃の姿がひとつ
あとは全部、死体が徐々に腐りゆく様子の画

なんでそんなの描くの・・・と思われますよね
私もそう思います
でもこれを聞いて「見たくないな」と思う人はなぜそうなるのか
それは、想像するだに気持ちが悪い、いわばグロいからでしょうか
理由としては今一つ・・・そう、余白が多すぎますね
たぶん、嫌な気持ちになるのが嫌なのでは無いでしょうか

まさにそれを目的にした図なんですね

どれだけ綺麗に生き抜いた人でも
死体になってしまえば、こんなにも醜く崩れていく
隠していた部分も隠せずに朽ち果てて、無くなっていく
何という事だ
そんな風になりゆくのが定められているのならば
自らを飾り立てるなんて考えは、捨てよう

これです

この「色」に端を欲する欲望の行きつく先を見せて
「色」に関する、視覚色覚に属する欲望を抑えさせる
それが九相図の作られた目的なんです
地獄の画である「地獄図」を見せて悪事を思いとどまらせるのと同じですね

この「生と死」だけの言葉の後半の最後尾に在る余白
ここを限界まで詳細に描くことが、そのために必要だったんですね
「九」っていう数字もあるいは意味を強めるのに必要だったのかもしれませんね

目の前に在るべき現実を、より詳細に描く事は
なにかへの抑止になり得るかもしれません
心の中でやるのも、いいことかもしれません

 

 

しかしまあ、大雪
降ってしまったのはどうしようも有りません
まさかこんなに降るとは、と思いながら私もずっと眺めていました

そしてようやく外に出ると、
写真のような大きな椿が折れているわけです
なんとかわいそうな事か・・・

ですがこれを殺しつくしてしまうのではなく
生きているものだけでも、生かすのが人間らしさだと思いまして
こうやって、折れた部分を水を入れた壺に刺したわけです
ある意味、生け花

もし私が、
大雪が降るとこうなってしまうな
あそこはああなってしまうのじゃないかな
だったら今のうちに対応しようかな、とか
そう思ってさえいれば

詳細に未来を思えなかった私も悪いし
雪も良くないよー! 悪い事してるよー!
反省してね!!!

でも未来を思うのも難しいですからね
私たちはやはり、過去を学んで、少しずつ後悔しながら、生きねばなのです

やがては死体になるとても
それすら生きた誇りにできるように

だから先週のブログの書き忘れも
後悔しながら来週に向かっていこうと思います

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